あるところに
一人の女の子がいました。

女の子は
中学時代の毎日の出来事から
男の子というものが好きではありませんでした。

そんな女の子が入学した高校は
中堅進学校。
とても厳しい校則。
真面目な雰囲気。

女の子は正直、
こんなところで3年間は無理だと思いました。
もっと自由にのびのびしたかった。
でも ここじゃできない、と思ったのです。

そんなことを思いながらも
いつのまにか1年が過ぎ
女の子は16才の春を迎えました。

新しいクラスに新しい出会い。

女の子はそこで
一人の男の子と出会います。

男の子なんて嫌いだった女の子ですが
彼は
優しくて
楽しくて
すぐに打ち解けることができ、

いつのまにか
男の子に対する偏見がなくなりました。

それに
大嫌いだった学校生活が
楽しいと思えるようになったのです。

女の子は
彼と過ごす時間が大好きでした。

そして気付いたのです。

 
「私は彼のことが好きなんだ」と───。

 
 
 
 

ところが。

 
ある日
女の子は知ってしまいました。

そう、
彼には
内緒で付き合い始めたばかりの彼女がいたのです。

 
女の子は
とても悲しみました。
どうしてもっと早く
彼と出会えなかったんだろう、と。

彼に対する想いは
日に日に募る一方でした。
いっそ好きになったことを忘れてしまいたい。
涙が溢れました。
誰かを想って泣くことなんて
生まれて初めてでした。

彼を好き。
それは本当。
だけど。
この想いは許されない。
それなら。

想いは封印してしまおう。

 
 
女の子は
自分の想いを告げないことを
自分と約束しました。

 
 
彼は
女の子に
少しいたずらっぽい笑顔で
「誰のことが好きなの?」

毎日のように
聞いてきました。

メールもたくさんしました。
いつも夜も深くまで。

夏休みに
「二人で遊ぼう」
なんて
彼に誘われてしまいました。

けれど女の子は
自分との約束を守り
彼の誘いを断り続けました。


ある日の夜中に 突然
「声が聞きたくなったから」
と言って
電話をかけてくれたこともありました。
電話越しの彼は
女の子に 歌を歌ってくれました。
とても上手な歌を 歌ってくれました。 

 
 

「好きな人が誰なのかを俺に教えてくれたら
 君にいいことがあるかもしれないよ」

彼は言います。

うそ。
女の子にとっての『いいこと』なんて
ひとつしかないのに。

彼も私と同じ気持ちでいてくれたら。
…そんなこと あるはずもないのに。

 
女の子は悩みました。
「彼は 私の気持ちに気付いてるのかしら?」

 
もし そうだとしたら…?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
時は流れ
季節は巡り 秋を迎えました。
修学旅行が終るとクラス替えです。

修学旅行でも
女の子は
彼との思い出がたくさんできました。

 
でも同時に
とても寂しい気持ちになりました。

 
こんなに好きなのに…

 
 
もう これでお終い。

 
 
 
本当に本当に
これで最後だから
遠くなる彼の背中を
女の子はずっと見てました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから。

 
 
彼と 彼のいる風景が当り前だった教室に別れを告げ
再び
新しいクラスに新しい出会い。

 
女の子は
彼への片想いを
忘れることはなかったけれど
もう 涙は出ませんでした。

 
 
 
時は流れ
女の子は17才の夏を迎えました。

 
あれから
あんなに仲がよかったのに
どこか気まずくて
彼とは一度も話せなかった女の子のもとに

彼が再び現れました。

 
ただ
それだけのことだと思っていたのに

 
その夜
そう 本当に久しく
彼から連絡がきたのです。

 
 
その日を境に
また 彼とよく連絡を取りました。
たくさんのメールをしました。

 
あの夏から1年経ち
彼がもう一度
「二人で遊ぼう」と
女の子を誘いました。

女の子は
かつての自分との約束を守るべきだと思ったし
彼にはまだ彼女がいたから
こんなことはいけない、と思ったけれど

行ってしまいました。

 
 
熱い真夏の午後。
講習帰りの受験生。
公園に二つの影。

見慣れた彼のいたずらっぽい笑顔が近づいてきて
緊張してドキドキした女の子は
顔を赤くしました。
彼はそんな女の子を見て
「まつ毛がついてるよ」
なんて言って
女の子をからかいました。

 
そして。
彼の言葉は。

 
「彼女がいなかったら 告ってたのに」

 
 
 
 
それからまた季節は過ぎて
高校卒業を迎えました。
最初はあんなに嫌だった高校生活も
最後はとても楽しかった思い出ばかり。

思い返してみても
たくさんある女の子の3年間の思い出の中で
彼の存在はとても大きなものでした。

 
恋は終っていたけれど
彼を想い続けた記憶は
一生残るだろう
そう思いました。
 
 
 

卒業してからも
彼はたくさん連絡をくれました。
女の子は彼に恋愛相談もしました。
その中で
彼が彼女と別れたことも知りました。

 
そうして
連絡を取るうちに
彼に誘われて
春に
二人は再会しました。

 
 
 
 
女の子の名前は紗綾。

2年前の恋が
まさか今になって叶うなんて

これっぽっちも思ってなかった
ある一人の女の子の恋物語。

 
 
 
 

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